久しぶりに読んだ本は、伊坂幸太郎の『チルドレン』。
この本は、5つの物語からなる連作短編集。おしゃべりで身勝手、傍からみると適当そのものな少年検査官、陣内のまわりに起きた出来事を、友人や部下の視点で描かれた物語です。
バンク
陣内が大学生の時分、銀行強盗に偶然遭遇するお話。語り手は陣内の友人である鴨居。人質なのに犯人にいちゃもんつけたり、歌いだしたりと、素っ頓狂な陣内の言動はさることながら、同じく偶然居合わせた盲目の青年、永瀬と共に犯人の正体を追求していくサスペンス(?)的な面白さがあるお話です。
チルドレン
少年検査官の武藤が、上司である陣内のいかげんな助言に惑わされ、時に助けられつつ、万引き少年の検査を進めていくお話。少年とその父親の不可思議な関係、そして終盤からの怒涛の展開が、読み出したら止まらない面白さです。
レトリーバー
バンクに登場した盲目の青年、永瀬の恋人、優子の視点で語られる物語。ビデオレンタル店の店員に恋の告白をした陣内ですが、あえなく撃沈。居合わせた、というか告白に付き合わされた優子と永瀬に「時間が止まった」と語る陣内は、失恋のショックで気が狂ったのか、はたまた…?
チルドレンⅡ
チルドレンから一年後の物語。語り手は同じく武藤ですが、彼は少年事件から家事事件担当へと変わっています。武藤が担当するとある夫婦の離婚調停と、陣内が検査中の少年が見事に繋がり、“ばかばかしくも格好よい”ラストが待っているお話です。
イン
デパートの屋上にあるプチ遊園地でバイト中の陣内は、嫌悪する父親に偶然遭遇。陣内は父親と決着を付ける為、ある行動にでるのです。この物語は、盲目の青年、永瀬の視点で語られます。と言っても彼は目が見えないので、耳で聞き、肌で感じたことで物事を把握していくのですが、まぁ、そのへんがこの物語の面白いところですね。
ボキャブラリー溢れる語り口、異なる視点から人物を描いていく手法、張り巡らされた附箋など、この作品でも伊坂テイストは全開。陣内という魅力的なキャラクターの存在も相成って、ページを捲る手が止まらないほど面白い物語でよ。たしかに、活字離れの人には効きそうだね。
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